2023.1〜3月 小惑星(98943)2001 CC21 恒星食観測キャンペーンの成果


2023年3月5日21時46分頃、広島県の1地点で、小惑星(98943)2001 CC21 による10.1等星(TYC 4082-00763-1)の食が観測されました。
小惑星(98943)2001 CC21は、JAXAはやぶさ2#(はやぶさ2拡張ミッション)の目標天体のひとつです。小惑星(98943)2001 CC21 は、2023年1〜3月に地球に0.13天文単位まで接近し、観測の好期となりました。JAXAでは、この期間に恒星食観測キャンペーンを実施しました。この観測キャンペーンは、日本公開天文台協会(JAPOS)、日本惑星協会(TPSJ)、そしてJAXAはやぶさ2拡張ミッションの共同で行われ、日本公開天文台協会と、プロ・アマ共同掩蔽観測チーム(リーダー: 吉田二美氏/産業医科大学・千葉工業大学惑星研究センター)に観測の協力を依頼されました。

JAXA小惑星2001 CC21観測依頼状/JAPOS
JAXA小惑星2001 CC21観測依頼状/プロ・アマ共同掩蔽観測チーム
Asteroidal occultation by (98943)2001 CC21


恒星食観測は、必ずしも小惑星との距離は重要ではありませんが、小惑星と地球の距離が近い時には恒星との離合が増えるために恒星食機会が多くなります。小惑星2001CC21は、恒星食の観測対象としては極めて小さく(推定直径600〜700m)、また当初の恒星食帯の誤差は+/-21kmと直径の数十倍もあり、非常に困難なチャレンジとなりました。キャンペーンの対象は観測条件の良い4現象(注1)でしたが、有志の観測者により暗い恒星まで観測対象を広げ、最終的には14現象の観測に挑みました。最終的に観測の総数は、延べ146地点・203名もの規模となり、恒星食観測としてはかつてない参加規模となりました。
(注1) キャンペーン開始時は5現象を予定。その後、恒星位置の信頼性の悪い現象(3月9日)を除き4現象を対象とした。

今回のキャンペーンに向け、掩蔽観測が未経験の方を含め、多くの観測者のために数回のリモート会議が行われました。これによって、掩蔽観測に関する技術向上や情報交換に役立ちました。

恒星食帯と観測者の配置マップ (クリックで拡大)

1〜3月に観測された2001 CC21による恒星食帯。=減光,=通過(食なし),=不成立。(協力:秋田谷洋氏(千葉工業大学))
恒星食帯の誤差(1σ) は、当初+/-21km と大きかったが、位置観測(アストロメトリ)が追加されていき、3月5日時点では半分以下まで改善された。3月5日の減光観測成功後は、+/-2.0kmまで劇的に改善した。

キャンペーン期間(2023年1〜3月)中の全観測者
○減光を観測:井田三良
○通過(食なし)を観測(共同観測者を含む/五十音順)
秋田谷 洋, 浅井 晃, 阿部 孝, 荒谷 明理, 有松 亘, 飯干 民男, 磯部 健, 井田 三良, 伊藤 亮介, 今澤 遼, 今村 和義, 猪山 香菜子, 岩尾 恒音, 植木 信幸, 宇野 政文, 大富 有歩子, 岡信 美咲, 岡村 和彦, 奥田 正孝, 奥田 虎太郎, 加瀬部 久司, 川上 勇, 川ア 良輔, 岸本 浩, 北崎 勝彦, 北崎 直子, 河野 健太, 佐伯 和久, 酒井 亮輔, 坂田 敬介, 佐藤 幹哉, 佐藤 智子, 島野 和愽, 杉野 友司, 鈴木 裕司, 瀧本 麻須美, 舘岡 洋 , 寺久保 一巳, 富樫 啓, 冨岡 啓行, 中島 茉彩, 永田 優奈, 永田 利博, 中谷 浩吉, 根元 健, 野田 寛大, 延岡 幸希, はしもと じょーじ, 橋本 秋恵, M垣 舞, 林 宏憲, 早水 勉, 福田 豪一, 藤田 康英, 藤原 貴生, 細井 克昌, 堀川 利裕, 前田 利久, 松本 桂, 三島 和久, 水谷 正則, 三田 宏幸, 宮下 和久, 宮地 真智子, 森岡 怜生, 森永 成一, 安江 水琴, 山下 勝, 山村 秀人, 吉田 二美, 吉原 秀樹, 渡部 勇人, 渡辺 裕之(73名/敬称略)

2023年1〜3月 小惑星(98943)2001 C21 による恒星食観測一覧
日付(UT)対象星等級地域観測サイト数減光を観測通過(食なし)を観測成立した観測サイト観測不成立のサイト共同観測者数全観測者数
1/10UCAC4 604-04616411.9近畿13010103316
* 2/6HIP 418057.7近畿-九州北部42000422870
* 2/8TYC 3799-00311-19.3東海,関東,北陸14012122418
2/24UCAC4 764-03615113.1東北1011001
* 3/5TYC 4082-00763-110.1四国,中国201181911030
3/9UCAC4 756-03103111.4中国,近畿南部120339113
3/9UCAC4 756-03101812.6北海道北部1000101
3/11UCAC4 752-03216912.6東北4033115
3/12UCAC4 750-03044512.5東北2000213
3/16UCAC4 741-02990512.9北海道2011102
3/18UCAC4 735-02948212.1近畿130558114
3/25UCAC4 710-01877712.6北海道1011001
* 3/26HIP 10366(=6Per)5.1九州南部18013135826
3/31UCAC4 682-00989310.7四国,中国3022103
合計146169707657203

* 主催側によるキャンペーン対象


これらの観測の結果、3月5日 TYC 4082-00763-1(10.1等)の恒星食において、井田三良氏(広島県東広島市へ遠征)により食による減光が観測されました。観測成果からは、小惑星の推定直径よりも小さな、449km +/-12m の弦が求められました。期間中のすべての観測機会において、減光の観測はこの一回のみです。 この観測により、探査機がフライバイする2026年7月の時点での2001 CC21の位置誤差は47km(1σ)となることがわかり、これは今回の観測前の誤差82kmを半減(Farnocchia氏)させる成果が得られました。

○ 軌道改良の推移
2022年末〜2023年3月に起こる掩蔽の地表の掩蔽帯誤差(1σ)の推移。
・2022年12月末 (JPL#168) +/-21km
・2023年2月14日 (JPL#202) +/-8.5km ここまでアストロメトリによる改良
・2023年2月15日 (JPL#203) +/-6.5km
/ 掩蔽観測支援のためFarnocchia氏(JPL)により検討されたもの
・2023年3月5日 (JPL#210) +/-2.0km 掩蔽観測による大幅な改良


2023年3月5日の観測(対象星TYC 4082-00763-1(mag10.1))から得られた整約図

Reduced by Tsutomu Hayamizu. (Update 2023.4.10)
観測から得られたライトカーブ
井田三良さんの観測から得られたライトカーブです。観測による減光時間は 0.105秒。

Observed by Miyoshi Ida. (2023.3.5 UT)


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※ 観測結果は、DESTINY+サイエンスチームのメーリングリストに公開されたものです。


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