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 星座の神話 定説検査(15)

ふたご座のモデル異説



まとめ

現代では、ふたご座のモデルは、ほぼ疑いなくカストルとポリュデウケスであるとされています。 しかし、古典では別の神や人物がふたご座であるという説があります。


検証・考察

フラムスティード星図(1795年)のふたご座。一人は竪琴を、もう一人は棍棒を持っている。
カストルとポリュデウケス(ラテン名:ポルックス)はディオスクロイとも呼ばれ、 ふたご座のモデルとなっている神話上の英雄です。
神話によると、大神ゼウスはスパルタの王妃レダに白鳥に化けて交わり、レダは卵を産みました。 天文愛好家の皆さんにとって、この卵から生れたのがふたご座に描かれているカストルとポリュデウケス(ローマ名:ポルックス) ということは言わずもがなのことでしょう。
しかし、レダが産んだ卵は2つで、もうひとつの卵からは女児の双子が生れ、つまりは四つ子だったことは 以外と知られていません。双子の女児の名は、クリュタエムネストラとヘレネ。 主な伝承では、彼らのうち、カストルとクリュタエムネストラは人間(テュンダレオスとレダの子)で、 ポリュデウケスとヘレネは神の子(ゼウスとレダの子)とされており、神の子であるポリュデウケスとヘレネは不死の身でした。
この4人の兄弟姉妹のうち、男児のカストルとポリュデウケスは常に行動を共にしますが、 クリュタエムネストラ、ヘレネとはほとんど関わることなくそれぞれの波乱の生涯をたどることになります。

さて、ふたご座のモデルは、ほぼ疑いなくカストルとポリュデウケスであるとされています。 しかし、古典では別の神や人物がふたご座であるという説もあります。 「太陽神アポロンとヘルクレス」「ゼトスとアンピオンの双子」「トリプトレモスとイアシオン」等です。 ゼトスとアンピオンは、ゼウスとアンティオペの男児の双子で、後にテーバイの英雄となります。 ゼトスは武勇に優れ、イアシオンは音楽に長けていました。 トリプトレモスとイアシオンは、デメテルの聖域エレウシスの英雄です。
残る「アポロンとヘルクレス」はあまりにメジャーなキャラクターですし、 ゼウスの子というだけで双子ではありませんから、意外に思われることでしょう。 しかし、プトレマイオス(AD83-AD168頃)は、アルマゲストでは ふたご座を「ディオスクロイ」と記す一方で、 テトラビブロス(注1)ではカストルを「アポロの星」、ポルックスを「ヘルクレスの星」と見なしています。 この説は主流ではないにしても、後世まである程度受け入れられていたと考えられます。 フラムスティード星図(1795)やウラノグラフィア(ボーデ、1801)等の近代のいくつかの星図では、 一人はアポロンのシンボル竪琴を、もう一人はヘルクレスのシンボルであるこん棒を持った姿で描かれています。

(注1)テトラビブロス: プトレマイオスによる占星術の哲学と実践に関する著作


※ 出典,参考文献
月刊星ナビ 2021年11月号 「エーゲ海の風」 (早水勉)


更新履歴
2022. 3.17 初版掲載
2022. 3.25 カストル,ポリュデウケスは四つ子であることの解説を追記


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