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 星座の神話 定説検査(17)

「春の大三角」は世界共通か?



まとめ

「春の大三角」は日本では広く普及していますが、ヨーロッパや北米ではほとんど使われていません。 世界的には「グレートダイヤモンド」(アルクトゥルス,スピカ,デネボラ,コルカロリをつなぐ四辺形)の方がよく知られています。 「春の大曲線」は日本で名付けられたもので、北米では別のフレーズ(本文参照)で紹介されています。


検証・考察

スカイ&テレスコープ1977年5月号 に掲載された、「春の三角(Spring Triangle)」の挿絵。 グレートダイヤモンド(コルカロリを含む四辺形)の下の部分と紹介されている。/提供:Kelly Beatty(Sky&Telescope)
春の大三角は、アルクトゥルス(うしかい座),スピカ(おとめ座),デネボラ(しし座)をつなぐ 大きな正三角形で紹介されます。しかし、元はデネボラではなくレグルス(しし座)で作られる広大な三角形でした。 これに対して、ヘンリー・ニーリー(Henry Neely 1879-1963)は、著書「星空の入門(A Primer for Star-Gazers 1946)」の中で、 アルクトゥルス,スピカ,デネボラの美しい正三角形を「おとめ座の三角(Virgo Triangle)」と表現して紹介しました。 その後、スカイ&テレスコープ誌の ジョージ ・ロヴィ (George Lovi 米 1939-1993) は、 1974年5月号1977年5月号 の誌面で、 ニーリーと同じ三角形を「春の三角(Spring Triangle)」のバリエーションとして紹介しました。 日本ではこれが広く紹介される切っ掛けになっているものと推測されます。

ところで筆者は、この調査のために、スカイ&テレスコープ誌の現役のケリー・ビーティ氏に取材し 貴重な情報を提供頂いたのですが、なんと彼は「春の三角(Spring Triangle)」を採用する人そのものを知らなかった といいます。このことも大変興味深く、夏の大三角,冬の大三角とは異なって「春の大三角」は日本でのみ 広く定着しているものでしょう。
また、日本で広く紹介されている「春の大曲線」は、近年に誕生した和製の造語です。 本誌の著者のお一人でもある金井三男さんによると、著名な天文学者の鈴木敬信(1905-1993 東京学芸大学)氏 が生みの親ということです。

金井三男さんの「集まれ!星たち」見上げて夜話 第151夜「春の大曲線を見よう」

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以上は、星ナビ誌2021年9月号「エーゲ海の風」に紹介した内容です。 その後、星座研究家のイアン・リドパス氏にこれらについて尋ねる機会を得ました。 氏は以下のように述べています。

英国と北米において、「夏の大三角」と「冬の大三角」は、日本で言われているものと同じ構成で普及しています。 一方「春の大三角」の話は誰からも聞きません。 日本で言われる「春の大曲線」は、私たちも知っていますが別の呼び方をします。米国で共通して呼ばれるフレーズに、
“Arc to Arcturus and spike (or speed) to Spica”
「(北斗の)弧(arc)を延ばしてアルクトゥルス(Arcturus)へ, そしてスピカ(Spica)へ突き刺さる(spike)/」または「急ぐ(speed)」 があります。
「春の大曲線(Spring Great Curve)」という名称は聞いたことがありませんが、良い響きで私は好きです。
なお、世界的には「グレートダイヤモンド」(アルクトゥルス,スピカ,デネボラ,コルカロリをつなぐ四辺形) の方が広くよく知られています。


※ 出典,参考文献
月刊星ナビ 2021年12月号 「エーゲ海の風」 (早水勉)


更新履歴
2022. 3.25 初版掲載


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