目次へ戻る
目次へ戻る

 星座の神話 定説検査(5)

尻尾の長いおおぐま座とこぐま座



まとめ

おおぐま座とこぐま座の尻尾は、ゼウスが天にあげるときに尻尾を持ったために伸びた、 という挿話があります。この話は古典のギリシア神話にはなく、 ルネサンス期にトーマス・フッドにより創作されたものです。


検証・考察

ヘヴェリウス星図(Johannes Hevelii 1690)の北天図。中央に描かれている、おおぐま座とこぐま座の尻尾は、 実在の熊よりずいぶん長い。
おおぐま座の神話にまつわるギリシア神話について。元は、処女神アルテミスのニンフだったカリストは、 大神ゼウスに愛されて子を宿しますが、女神の怒りに触れて熊の姿にかえられました。 カリストの息子アルカスは成長して狩人となり、森で熊の姿となった母カリストと出会いました。 以下は、そのシーンから...。

「星座ガイドブック春夏編/藤井旭」(1974)より
ゼウスは、さすがにこの母子の運命をあわれに思い、アルカスも小熊の姿にかえると、 つむじ風を送って(母の熊と小熊)もろとも天へまきあげ星座にすえました。 星座絵で見ると、大熊小熊のしっぽがやけに長いのが気になりますが、 これはゼウスが、大熊小熊のしっぽをつかんであわてて天にほうりあげたからだといいます。

この神話もプラネタリウムなどで人気があり、よく紹介されています。 しかし、古典のギリシア神話には「大熊小熊の尻尾が長い理由」は記されていません。 この挿話の発生元は、星座研究家のリチャード・ヒンクリー・アレン(米 1838-1908)や イアン・リドパス(英 1947-)により明らかにされています。それによると次の通りです。

ガリレオと同時期の数学者で天文学作家のトーマス・フッド(Thomas Hood 英 1556?1620) は、 学生から奇妙に尾の長い星座の熊について問われ、ジョークで 「熊はとても重いし地上から天までは遠いから、ゼウスが熊を天に引っ張り上げたときに、 尾が伸びてしまったのさ!これ以外に理由は知らないよ。」と言ったことが始まりとしています。(※1)


※ 出典,参考文献
(※1)
Richard Hinckley Allen 「Star Names ? Their Lore and Meaning」
Ian Ridpath’s Star Taled
月刊星ナビ 2020年11月号 「エーゲ海の風」 (早水勉)


更新履歴
2021. 1.7 初版掲載


目次へ戻る
目次へ戻る