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 星座の神話 定説検査(7)

月がオリオン座の近くを通る理由



まとめ

白道(月の通り道)がオリオン座の近くにある理由を、アルテミス(月の女神)が猟師オリオンを慕っているため という話があります。しかし、この話は古典神話にはありません。この話は野尻抱影氏が創作した可能性があります。


検証・考察

ディアナとオリオンの死 (1685) ダニエル・ザイター作(オーストリア)。/ルーブル美術館 所蔵
ディアナはアルテミスのローマ名です。
プラネタリウムでよく紹介されるオリオン神話に次のものがあります。
「オリオンが死後に天に昇ってからも、月の女神アルテミスはオリオンを忘れることはありませんでした。 このため、今でも月は一ヶ月毎にオリオン座の近くを訪れるのです。」
この挿話の元は、野尻抱影氏の著作にあると思われます。

「星座の話」野尻抱影、初版1954年より
女神は、それがオリオンとも知らず、弓と矢をとって、それを射ると、矢はあやまたずあたりましたが、 岸にうちあげられたのが、愛する狩人だったので、ひどくかなしみました。 アルテミスが大神ゼウスに願って、オリオンをほしぞらにあげてもらい、自分の銀の車で走って行く時に、 いつも見えるようにした。

しかし不思議なことに、この話の後段「月がオリオンの近くを通る理由」は海外の解説書には見当たりません。 このことを、星座研究家イアン・リドパス氏,スカイ&テレスコープ誌編集者ケリー・ベティー氏ほか ヨーロッパと米国の識者に尋ねたところ、彼らはこの伝承を知らないといいます。 野尻氏のリファレンスが分からないために断定は難しいものの、これはおそらく野尻氏の創作ではないか と推測され、少なくとも日本のみで流布している挿話でしょう。

なお似ているもので、 「オリオンの犬(シリウス)もオリオンとともに天にあげられ、彼らは天に昇ってからも プレヤデス姉妹を追いかけている。」
という挿話は海外にも存在しています。


※ 出典,参考文献
月刊星ナビ 2021年2月号 「エーゲ海の風」 (早水勉)


更新履歴
2021. 2.22 初版掲載


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