赤道儀,経緯台の汎用自動化システム

ZEUSプロジェクト技術資料


E−ZEUS2 資料公開 (2014.11.20)
前身のE-ZEUSを引継いで、使用頻度の低い機能の簡略化と、要望の高い機能の拡充を図った E-ZEUS2 を開発しました。
E−ZEUS2 の技術資料はこちら
これまでの E−ZEUS の技術資料はこちら


ZEUSプロジェクトとは
ZEUSプロジェクトは、望遠鏡の架台を自動化するためのシステムです。全周微動ならほぼ全ての架台の自動化 を可能とすることを目的として開発された汎用の「いわゆる自動導入システム」です。

2007年6月 日本公開天文台協会における講演資料「望遠鏡自動化プロジェクト」(PDF:470kB)

ZEUSプロジェクトは、当初 月刊天文ガイド誌の工作記事として企画されたものです。
[プロジェクトメンバー/ プロジェクトリーダー=高槻幸弘氏,モータドライバ設計=外山保広氏, ソフトウエア開発=谷藤賢一氏(SuperStar IV)・瀬戸口貴司氏(Yoc),コントローラ設計=早水勉]
残念ながら、その後天文ガイド誌の頒布品コーナーは廃止されたことから、同誌からの供給はなくなりましたが、 代わりに望遠鏡販売店 スカイバード さまを始めとする各方面のご厚意により世に出ることとなりました。

ZEUSは天文普及を目的としてスタートしたプロジェクトであるため、技術情報を公開しています。 このページは、制御のハードウエアに関する情報を掲載しており、これらの情報はどなたでも自由に閲覧し利用していただいて差し支えありません。
このページの文責は主に早水勉にあります。...が、このページの情報の利用により、いかなるトラブルが発生しようとも早水も他のプロジェクトメンバーも一切の責任を負いません。
このページの情報やスペックは予告なく変更することがあります。
このページのデータはある程度の電気機械,球面三角計算の知識のある方を前提に記しています。
このページへのリンクは自由です。

ZEUSプロジェクトの方針
ZEUSプロジェクトは、天文普及と天文界の発展を第一の目的とします。
だから、ZEUSプロジェクトの技術は、誰にでも公平に公開します。

技術的な方針
制御はパソコンを使うことを前提とする
パソコン使用と割り切ることで、ハード(ZEUS本体)の負担を大きく減らすことが出来ます。 例えば天文計算に付き物の三角関数など複雑な演算は、演算の得意なパソコン側で行います。 ハード側の制御は、高速の論理処理が得意でアマチュアに開発可能な PICマイコンで処理します。
○ 大きな利点/ハードの挙動をパソコンが細かく指示する→ソフトの進化次第で複雑な仕事が可能となる
× 欠点/他の普及ソフトとの互換性がない。ソフト開発の敷居が高くなる。
パソコンがなくてもマニュアル操作はできることとする。
アクチュエータはステッピングモータを前提とする
ステッピングモータと割り切ることで、制御も高精度かつシンプルになります。(メカに関する格言「単能は万能に優る!」) DCモータは低価格な反面、精密な制御が難しく(恒星時駆動のように)ゆっくり回すことに向かないので対象としていません。
# 私的な意見 /そもそも望遠鏡の制御に、DCモータを採用すべきではないと思う。猫に「ワンと鳴け」というようなものです。それ相応の仕事しかできません。
通信する座標はパルス数に置き換える
ZEUSでは、赤経軸,赤緯軸(経緯台の場合は、水平軸,高度軸)のモータが、軸を一回転するために必要なパルス数を教示することにより、汎用化しています。 また、ハードがデータを受け取りやすいよう、赤経赤緯の座標もパソコン側で単純なパルス数(16進表示)に置き換えています。 PICマイコンの処理は高速のため、パルスのカウントを正確に行えます。ZEUSの設計上の導入誤差はわずか数パルスです。
# 自動導入の誤差はメカ要因がほとんどです。極軸,光軸,たわみ など。

ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS (更新 2016.8.7)
ASCOM 対応 E-ZEUS ドライバソフト
ASCOM は天体観測用の様々なソフトウエアや機器を、統一した環境下で制御する規格です。 ASCOM 上で機器を稼動するには、機器の制御が ASCOM の仕様に準拠する必要がありますが、ZEUS プロジェクトは ASCOM には準拠しておりません。
しかし、天文愛好家の 星羊翁さん により、E-ZEUS を ASCOM 上で制御できるようにするためのソフトウエア「ASCOM Telescole Driver for E-ZEUS」(フリーウエア) が開発されました。 これにより E-ZEUS は、プラネタリウムソフト "ステラナビゲータ","Cartes du Ciel","TheSky6 Professional" 等でも制御できるようになりました。
現在(2016年8月)は、E-ZEUS2 にもフル対応にバージョンアップされています。

星羊翁さん制作による「ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS」のページへ


天文台総合制御システムELM (掲載 2011.7.1)
天文台総合制御システムELM の E-ZEUS 対応評価版が公開されました。
ELM は、天文台の望遠鏡やドームといった機器類をコンピュータで制御するための汎用のWindows用ソフトウェアです。 ELMは NEWS 他 数多くの制御装置や望遠鏡がコンピュータ制御できます。 また多くの市販星図ソフトなどと連携して望遠鏡の現在の位置表示や導入指示が星図上からも可能です。 このELMが E-ZEUS に対応し、評価版が公開されました。
※ ELM は有料のソフトウエアですが、評価版は 30日間無料で使用できます。

(株)スカイグローブ「ELM for E-ZEUS」のページへ


赤道儀自動化システム E−ZEUS 技術資料
E−ZEUS 構成ブロック図 (PDF:55kB) / E-ZEUS システムの構成図,中枢マイコン(TGauto) 技術資料
POST(Programable Oscillater for Sidereal Time) (PDF:43kB) / プログラマブル恒星時パルス生成マイコン(POST) 技術資料
E−ZEUS コントローラ回路図 (PDF:359kB)
 ※回路図中のプログラム済みマイコンプログラム済みCPLD の実費提供は終了 しました。 E−ZEUS2 技術資料 をご覧ください。
2相バイポーラステッピングモータドライバ回路図 (PDF:238kB) / マイクロステップ駆動
 ※E-ZEUS で標準にしているモータドライバの回路です。モータドライバは市販のものもありますし、赤道儀の種類や大きさによって、より適切なものに置き換えが可能です。 このドライバ単体でも他のシステムに応用可能なよう設計しています。
  TB62209FG データシート (PDF:839kB) / 2相ステッピングモータバイポーラ駆動専用IC
  ※ドライバ部に採用している専用ICのデータシートをそのまま置いています。E-ZEUSドライバ部の回路図は、この資料中の推奨回路(P48)とほとんど同じです。
CPLD E-ZEUS1 ピンレイアウト / ロジック回路部分をLSI化したものです。
E-ZEUS 初期設定マニュアル (PDF:552kB)
E-ZEUS 通信コマンド / シリアル通信のスペックおよびコマンド一覧
 ※現在対応しているプラネタリウムソフトウエアは、SuperStar IV(シェアウエア) と Yoc(フリーウエア)です。

経緯台自動化システム A−ZEUS 技術資料
A−ZEUS 構成ブロック図 (PDF:55kB) / A-ZEUS システムの構成図,中枢マイコン(TGautoAA) 技術資料
POST(Programable Oscillater for Sidereal Time - Alt Azimuth) (PDF:47kB) / 経緯台制御プログラマブル追尾パルス生成マイコン(POSTAA) 技術資料
A−ZEUS コントローラ ベースボード回路図 (PDF:275kB)
A−ZEUS コントローラ マイコンボード回路図 (PDF:193kB)
 ※回路図中のプログラム済みマイコンプログラム済みCPLD は実費にて提供可能です。ご入用の方はご連絡ください。ただし、製作は自己責任でお願いします。
CPLD A-ZEUS1 ピンレイアウト / ロジック回路部分をLSI化したものです。
A-ZEUS 初期設定マニュアル (PDF:498kB)
A-ZEUS 通信コマンド / シリアル通信のスペックおよびコマンド一覧
 ※現在対応しているプラネタリウムソフトウエアは、Yoc(フリーウエア) のみです。

望遠鏡架台自動化のために必要な天文計算
この項では、望遠鏡の自動化に関る基礎計算をまとめます。 このような計算は、望遠鏡の制御では必ず必要となるはずですが、何故かそれらを解説した資料は見当たりません。 多くの方に利用してもらえるよう、ZEUSプロジェクト遂行過程で見出した計算方法を紹介します。
自動導入の精度に与える機械的な誤差
結論から言うと、自動導入においては「光軸と極軸の平行誤差」がもっとも大きな誤差要因となります。 電気的な精度は機械誤差に比して無視できるほど小さいものです。精度の高い自動導入を実現するためには、 これらの機械誤差をまず対策すべきです。
極軸の誤差
赤経軸と赤緯軸の直交誤差
光軸と極軸の平行誤差(最も重要)

経緯台の制御に必要な天文計算
経緯台の制御においては、座標変換は当然ながらいくつもの球面三角計算が必要となります。それらをここにまとめます。
地平座標−赤道座標変換
方位軸,高度軸の追尾速度
経緯台の天頂問題と実機への反映
2点アラインメント :2星による経緯台の姿勢教示
イメージローテータ(A-ZEUS では対応していません)
※ この項は、相馬充(国立天文台)さん,瀬戸口貴司(東亜天文学会)さん のご教示が沢山含まれています。この場を借りて感謝感謝!
リンク
SuperStar IV / E-ZEUS に対応するプラネタリウムソフト(シェアウエア)
Yoc (ようくん) / E-ZEUS, A-ZEUS に対応するプラネタリウムソフト(フリーウエア)
# Yoc の作者 瀬戸口貴さんのご逝去に伴い、上記の Yoc のサイトは閉鎖されています。代わりに以下のリンクに Yoc (V3.0B) を置きました。
# Yoc (ようくん) V3.0B はこちらのページからダウンロードできます。

スカイバード / E-ZEUS 取扱店
スターベース / タカハシJシリーズ専用 E-ZEUS 取扱店

ペンション・スケッチブック / E-ZEUS, A-ZEUS デモ&相談窓口
学研都市天文台ブログ / E-ZEUS デモ&相談窓口

星見庵日記番外編 / 星羊翁さん制作による「ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS」(フリーウエア)
ELMシリーズ (株)スカイグローブによる「ELM for E-ZEUS 評価版」(評価版は 30日間無料)


文責:早水 勉
技術的なお問い合わせは こちら までどうぞ。

更新履歴
2016. 8. 7 : 星羊翁さん制作による「ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS」の情報を更新. E-ZEUS2 に対応 2016. 6.16 : 瀬戸口氏作 Yoc V3.0B 代替ページを作成 2011.11.20 : E-ZEUS2 技術資料 を掲載 2011. 7. 1 : (株)スカイグローブによる「ELM for E-ZEUS 評価版」を掲載 2010. 1.21 : 星羊翁さん制作による「ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS」を掲載 2007. 9.16 : 「2相バイポーラステッピングモータドライバ回路図」を掲載 2007. 9. 5 : 「E-ZEUS 初期設定マニュアル」の記載の訂正 2007. 6.15 : 公開天文台協会講演資料を掲載